<<人工知能>>
「もう、さっきから同じ道をグルグル回ってるだけじゃない!」
「ご、ごめん。ほ、方向音痴なもんだから」
「最低!」
正樹と順子の初デートは、東京ディズニーランドへ行くつもりが、巣鴨とげ抜き地蔵に到着してしまった。
その3日後、正樹はフラレた。
「ちくしょー、カーナビさえあれば・・・」
翌日、正樹はカー用品店に直行した。
「あ、あの、カーナビ欲しいんですけど。」
「お客様、これはまだ開発段階なんですが、特別に次世代のカーナビをご用意いたしますよ。普通のボイスコントロールの領域を超え、究極の人工知能(A.I.)を内蔵したカーナビ。まるで人間が内臓されている感覚です。3種類ございますから、お好きな機種をお選びください。」
「わー、ありがとうございます。試してもいいですか。」
「えー、こちらの機種は、『アメリカ人・ジェームス28歳』と言いまして、マサチューセッツ工科大学の博士号を持つ、ドクター・ジェームス・パトリックの知能がインプットされております。走行しながら英語力がアップし一石二鳥。」
”Hi, Masaki, Where are you going?”
「さあ、返事して。」
「ほ、本屋に。」
「お客さん、これはアメリカ人ですから。」
「ぶ、ぶっくすとあー」
”Turn to the right at next corner”
「い、い、いえす」
「えー、次が、『女子高生・ゆみ子18歳』です。こちらは清心女子大付属高校・3年2組の青山ゆみ子さんの知能が内臓されています。モテない方に大人気になること間違いない一品です。ちなみにスリーサイズは90・58・88です。」
”正樹さん、ゆみ子のこと好き?”
「も、もちろんだよ」
”きゃっ、ゆみ子、うれしい。次、右に曲がってね。チュッ(はぁと)」
「えー、最後が、『鬼教官・祐作42歳』です。こちらは、種子島自動車教習所ベテラン教官・徳俵祐作さんの知能がインプットされてますので、事故に遭う確率が大幅に軽減されます。」
”よそ見すんな、ボケ”
「す、すいません」
”次、右!”
「は、はい」
”アホ、ウインカーは30メートル手前だ、ハンコやらんぞ!”
「以上、3機種の中からお選びください。」
「じゃ、じゃあ、『ゆみ子18歳』を。」
「あなたもなかなか好き者ですねぇ。すぐお取り付けいたします。」
〜カーナビ始動。〜
(ポーン)
”正樹さん、今日はどこに連れてってくれるの?”
「え、えーと、コンビニに。」
”えー、ゆみ子、つまんなーい。”
「じゃ、じゃあ、海に。」
”やったー、高速道路に乗ってね。”
(ザバ〜ン、ザバ〜ン)←波の音。
「なんで、俺は海に来てるんだ? 帰ろう。」
〜カーナビ始動。〜
(ポーン)
”正樹さん、次はどこ?”「帰るよ、もう。」
”えー、ゆみ子、今日はお友達の家にお泊りしてくるって言っちゃった。”
ラブホ受付 「お客さん、ここは一人で泊まる所じゃないんですけど・・・」