<<ひねくれ少年物語>>


僕は、ずっと悩んでいた。
学校というものは常に僕を悩ませ、苦しみの素であり、精神を追い詰めたところでしかなかった。
いっそ屋上から飛び降りてしまえば、どれだけ楽になれることか。

「いや、僕にはやることが残っているんだ。」

僕は、盗んだバイクで走り出した。
北へ行こう。
赤道に近づくことは、僕を苛立たせる。
人間がのほほんと暮らしている場所は嫌いだ。
寒さと飢えのある北の地へ。
緊張感と期待感があいまって僕はとまどい、思わず咳払いをする。
こんな気持ちはいつ以来だろう。
何でもできると信じていたあの頃の気持ちに戻る・・・

とりあえず、鞄に数枚のシャツと下着とロゼット洗顔パスタをつめた。
おっと、方位磁石を忘れてはいけない。
歩いているうちにどっちが北か分からなくなるといけないからな。
それに、防寒具だ。北極は網走の冬より厳しいと聞く・・・・・・
小須田部長型の耳あては必須だ。
お肌が乾燥して荒れるといけないから、しっとりタイプの化粧水・乳液もいるな。メーカーはもちろんコーセー。
念のため化粧下地も持っていくか・・・・・・
こうなるとファンデーションがないと不自然だな。
リップクリームも無色では趣がない。色付き、ピンクがベストだ。



そして少年は真南に向かって歩き始めた。



そこへオヤジが現れた。
「おまえは相当なひねくれものだな。」



オヤジは、「よーし、ワシとひねくれ合戦をしよう。」と言うと


さっさと家に帰っていった。




そんなオヤジの背中を見つめながら少年は呟いた。



「旅はするもんだな。ありがとう、オヤジさん……」

 

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