こっそり月見雑文祭

参加してみました

「テーマ」は、秋や月見などを多少絡める。

「縛り」として、次の条件を満たす文言・語句を文中に入れる

1、始まり:満月の夜に
2、文中に『すすき』『うさぎ』『団子』をいれること。(言葉の前に何をつけても可)
3、(おきかげ&けいさん提案)掛詞又は(文中に)月見に関した語の同音異義語を入れること。
  例:「月=尽き=憑き」など
4、締め:やっぱり丸かった。(語尾は変えられても結構です)





<<ムーンライト刑事>>



満月の夜に、とある中国人グループと日本の闇組織が麻薬取引きをするとの情報を得た。

今日がその満月の夜。
俺の名は観月照孝。神奈川県警に勤める新米刑事。麻薬取引き現場に張り込むのは初めての経験である。

取引き場所は横浜・大黒埠頭。
緊迫した状況とは裏腹に辺りは月明かりで照らされ、海面に映る丸い月が生き物のようにゆらゆらとうごめく神秘の世界。

「よっ、観月。」

不意に背後から声を掛けられた。

「あっ、望月さん。お疲れさまです。」

先輩の刑事だ。団子っ鼻が特徴で、家ではウサギを飼っているという心優しい温和な男であるが、これまでいくつもの修羅場を潜り抜けてきた凄腕である。その証拠に、彼の腹部には刃物で突き刺された傷跡が無数に存在する。

「いいか、観月。絶対に目を離すんじゃないぞ。奴等は必ず今夜ここに現れる。」

「はい。」



それから2時間ほど過ぎただろうか、そろそろ日付が変わろうとしている時、一隻の小さなボートが岸壁に着岸した。
それと同時に、彼方から黒塗りのベンツが一台現れ、ボートの手前で停車した。

俺の緊張は最高潮に達している。ドラマの世界が目の前の現実として繰り広げられようとしているからだ。
手に汗握る瞬間。俺は今すぐにでも奴等を取り押さえたい衝動に駆られる。

「落ち着け、観月。取引きが成立した瞬間を押さえるんだ!」



ボートから中国人風の男が飛び降り、ベンツからは黒いコートに身を纏った初老の男がゆっくりと降りる。
両者は一歩一歩と歩み寄り、まずは中国人風の男が黒いバッグの中身を確認させ、初老の男が軽く頷くと、今度は初老の男が銀色のアタッシュケースを開け、中国人風の男はニヤリと頷いた。

そして両者が互いにそれを受け渡そうとした瞬間、望月刑事に続いて俺も飛び出した。

「動くな! 警察だ。麻薬密売の現行犯で逮捕する。観月、ブツを調べろ!」

中国人風の男も、初老の男も突然の出来事にキョトンとしている。

そして俺もキョトンとした。

「望月さん、これ、麻薬じゃないです。」

「なにっ!?」

「しかも、アタッシュケースの中は現金じゃないです。」

「なにっ!?」




「いやー、今日は十五夜だというのに、最近じゃこれも中々手に入らなくてね。困ってたんですよ。」

「わたし、風俗好きアルよ。」

ススキの穂と、札幌ススキノ・ファッションヘルス『バニーちゃん』割引券との取引きであった。




十五夜の夜が俺の刑事初仕事。
4人で月見酒と洒落込み、事件はやっぱり丸く収まったのである。

 

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