<<バックトゥーザヒューチャー>>
(ガチャ。ギー。)
頑丈な門扉が開き、一人の男が15年ぶりに出てきた。
「いろいろ大変だと思うが、真っ当な人生を送るんだぞ。」
「はい。お世話になりました。」
この男、田代は悪質な盗撮、覗き見行為の現行犯、覚醒剤所持により逮捕。
以後、刑務所生活での素行の悪さも災いして、15年にも及ぶ刑務所暮らしになってしまった。
田代を出迎えてくれた者など一人もいなかった。
妻、子供は去っていき、友人、知人、師匠からも見放された。
15年ぶりの社会に突然放り出され、右も左もわからぬまま、気の向くままに街へ向かって歩き出した。
空腹を満たす為、あるコンビニに入りパンを買った。
「いらっしゃいませ。126円です。」
「えっ? 120円じゃねーのかよ。」
「は?」
「は?、じゃねーだろ。120円って書いてあるじゃねーかよ。」
「ですから、消費税と合わせて126円です。」
「消費税?」
未知の世界に飛びこんでしまったことに気付き、軽くパンチを食らったようだった。
衝撃はまだまだ続く。
街行く者皆、トランシーバーを持っている。
「なんなんだ、これは?」
その正体を知りたい衝動に駆られて、一軒の電器屋に駆け込んだ。
「こ、これはなんですか?」
「あっ、これは写真がとれるんですよ。」
「えっ?」
「それと、これは話題のFOMAっていいまして、動画も観れるんですよ。」
「えっ?」
言ってる意味がよくわからない。たかがトランシーバーなのに。
さらに衝撃の新事実発覚。
田代が大好きだったおにゃんこクラブが解散していたのだ。
会員番号4番の新田恵利が特にお気に入りだったのだが、今はどこで何をしているのだろう。
「モーニング娘。?、なんだそりゃ?」
撃ちのめされた田代は落胆の表情を隠しきれない。
足取り重く15年ぶりに我が家に帰り、テレビをつけた。
「お前達だけだよ、変わってないのは。」
「イクラちゃーん」
「ハーイ。バブバブ。」